バースディー

 

「痛っ!」

台所の方から、麻桜の小さな悲鳴が聞こえて、京一は立ち上がった。

「どうした?」

「ん、ちょっと、指切って…」

指を口に咥えていた麻桜が、振り向いてそう言った。

「おまえ、どうしたんだよ。最近、おかしいぜ」

「あたしだって、たまにはドジる事くらいあるわよ。そんな心配しないでよ」

笑いながら、麻桜は救急箱を取り出して、指に包帯を巻こうとする。

「やってやるよ」

なかなか、上手く巻けない麻桜を見かねて、京一が包帯を取って指に巻く。

「ごめん」

「何、謝ってんだ」

京一は、麻桜の顔を覗きこんだ。

「疲れてんじゃないのか?少し、休んだ方がいいんじゃないか?」

「平気だって。すぐ、食事のしたくするから、子供達見ててね」

そう言って、麻桜は京一に背を向けた。

「…」

そんな麻桜を心配そうに、京一は見つめていた。

「夜、寝てないみたいなんだよな」

「麻桜か?そんなに子供達の夜泣きがひどいのか?」

「夜泣きとかはしないけどな、何か気になるみたいで、3時間おきに様子を見にいってる

しな」

長老の家を訪れた京一の相談を受けていた彼女は、その話を聞いていた。

「ふうむ。初めての子供だし、気が張っているのかもしれんが。眠れないというのは、

心配だな。1日か2日、夜だけでも子供を預かってやろう」

「ありがたいけど、あいつが承知するかどうか」

「それを何とかするのが、お前の役目だろう。まぁ、それでも眠れない様なら、これを

飲ませてみることだな」

長老は立ち上がって、戸棚の中から、小さな包みを取り出した。

「なんだよ、これ?」

「わしが作った催淫剤じゃ。軽いものだし、身体に害は残らん。どうしても駄目なら、使ってみろ。抱いて、疲れさせれば眠れるかも知れんからな」

「これさ、使うとして…半分の量でも効くか?」

「効かないわけではないが、何故じゃ?」

「あいつにだけ、薬使うような真似したくないんだ。こんなモン使わずに済むなら、それに越した事ねぇからな」

京一は、包みをズボンのポケットに捻り込んで、立ち上がった。

「一応、貰っておく。ありがとな」

彼は、それだけ言い残して、長老の家を出ていった。

家に戻った京一は、忙しく動き回っている麻桜に、声をかけた。

「麻桜、長老が1晩か2晩なら、光夏と夏恋を預かってくれるって言ってくれてるんだけど、どうする?」

「なんで?」

「お前、全然眠ってないだろう。心配してくれてんだよ」

「2、3日眠らなくったって、平気だよ」

「そんなもんじゃねぇだろう。光夏達、生まれてから一月、殆ど寝てないだろう」

「そんなの、平気…」

「駄目だ。少し休んで、また頑張ればいい。せっかく言ってくれてるんだ。甘えたって

いいと思うぜ」

「う…ん」

その夜、京一の腕の中で眠っていた麻桜は、突然起き上がった。

「どうした?」

「眼が覚めて…習慣になってるみたい」

「あのな、麻桜」

起き上がった京一は、椅子にかけてあったズボンのポケットから包みを取り出した。

「長老から、もらった薬なんだけどな」

「え?」

何処か歯切れの悪い京一の言葉に、麻桜は彼と包みを交互に見た。

「ただ、催淫剤らしいんだ。それでも、飲むか?」

「催淫剤って…まさか」

「そういう薬だよ。どうする?飲むか飲まないかは、麻桜の自由にしていいから。

お前が飲むって決めたなら、俺も半分飲んでやるから。」

「あたし、あまり薬効かないのに、それ飲んでも効かないかもしれないよ?」

「飲んでみなけりゃ、判らねぇだろう?」

麻桜は、少し俯いて考えていた。

「ねぇ、京一。あたしがこれを飲んで、もし乱れたりしたら、抱きしめてくれる?」

「ああ」

「…」

「そんな心配はしなくてもいいから」

「嫌わない…?」

「そんな事ある訳ないだろう」

麻桜の髪を梳きながら、京一がそう言った。

「だったら…飲むよ。京一が、あたしに害のあるものを飲ませる訳ないもの。あたし一人で全部飲む」

「麻桜…」

京一の手から、包みをとって広げた。

「お水、くれる?」

紙の上の粉薬を見つめながら、麻桜は京一に頼んだ。

台所から汲んできた水の入ったコップを受け取って、薬を口に含んで一気に飲み干した。

それから、麻桜は眼を閉じて、京一の胸に凭れかかった。

しばらく、そのままでいた麻桜が微かに震え始めた。

「うっ…」

麻桜の身体に浮かび始めた汗の珠を指でなぞりながら、京一は彼女の耳元で囁いた。

「大丈夫か?」

「ん…」

耳元に零れる吐息にも、快感を感じて、麻桜は喘ぎを漏らす。

そんな麻桜の耳の裏に軽く舌を這わせながら、京一は彼女の背後から胸に腕を回して、

抱きしめる。

彼女の身に纏っているTシャツの裾から両手を差し入れると、胸の膨らみを掴んで、揉み始める。

「や…ん」

「今、ここを吸えるのは、光夏達だけだから、指だけで我慢してくれな」

その言葉ともに、先端を指で擦られて、麻桜は声をあげた。

「あっ」

「感じるのか?」

うなじから背中に唇を這わせて紅い刻印を刻みつけながら、京一がそう聞いた。

「うん…で…も」

わざと弱い所を避ける様に、這う唇の動きに、麻桜の瞳に涙が溢れる。

「お願い…京一の顔が見えないの…やだ…」

堪えきれずに、くぐもった声で麻桜は哀願する。

「判った」

京一は、麻桜を抱きしめて身体の向きを変えさせる。

彼女は、京一の肩に顔を埋めて、荒い息を吐く。

「大丈夫か?」

「ん…」

麻桜の髪を梳きながら、彼女が落ちつくのを待つ。

「もう…大丈夫だから…」

肩口から、少し顔を上げて、小さな声で麻桜が呟く。

そんな麻桜の唇に、啄ばむようなキスを繰り返す。

「どうして欲しい?その通りにしてやるよ」

「キス…して…」

「それから?」

潤んだ瞳で、自分を見つめる麻桜の耳元に息を吹きかけながら、京一は尋ねる。

「京一を…感じたい…」

自分の中で荒れ狂う熱に堪えきれず、麻桜は哀願する。

そんな麻桜の身体を静かに横たえさせると、京一は、自分の着ていたシャツを脱いで、

彼女の身体の上に覆い被さった。

そして、啄ばむようなキスを何度か繰り返す。

それは、やがて深いものに変わり、小さく開かれた口の中に舌を挿し入れる。

麻桜の舌を絡めとるように、舌を動かしながら、口内を弄ぶ。

「ふっ」

重ねあった素肌の熱さを感じて、麻桜の中の熱さも高まっていく。

「あ…くっ」

麻桜の素肌に唇を這わせながら、京一は指でもその素肌をなぞっていた。

その動きが、突然止まる。

「京一?」

「結局、傷が残ったんだな…」

乳房の下に、残る傷痕を見て、京一は辛そうな表情を浮かべて、その痕に唇を這わせる。

「この位、なんでもないよ。京一の方が、凄い痕が残ってるのに」

麻桜は腕を持ち上げて、京一の胸に残る痕を指で触れる。

「俺は男だからな。それにこれは俺の力不足で負った傷だから、誰のせいでもない。

だけど、麻桜のは違うだろう?」

「同じだよ。何も変わらない」

麻桜は、涙の溢れかかった瞳で京一を見つめながら微笑んだ。

そんな麻桜が愛しくて、京一は彼女を抱きしめて、行為を再開させる。

「きょういち…」

与えられる感覚に、麻桜はシーツを掴んで耐えていた。

「麻桜?」

「熱いの…」

心配そうに行為を止めた京一の問いに、薄く眼を開けて、麻桜は答える。

「身体が熱くて…堪らない」

その言葉に、京一は麻桜の秘部に指を這わせる。

「あ…」

「凄いな。もうこんなに濡れてる」

いつもより、早く濡れ始めているそこを確かめて、京一は笑う。

「あ…ん」

指を引き抜かれるのを嫌がるように、麻桜が身動ぎする。

「欲しいのか?」

少し意地悪なその質問に、麻桜は顔を赤らめる。

顔を背けて答えない麻桜に、京一の悪戯心が顔をもたげる。

麻桜の秘部に、指が挿し入れられた。

「このまま、指でいくか?」

「い…や」

自分の中で動かない指に、焦れたように麻桜は腰を動かし始める。

「あ、い…い。京一」

「どうした?」

「お願い…」

麻桜が何を願っているのか、理解しながらも、京一は指を動かそうとはしなかった。

「なぁ、麻桜」

「な…に?」

耳元で囁かれる声に、京一を見つめる。

「俺の頼み、聞いてくれるか?」

「あたしに…できることなら…」

「久し振りだからな。麻桜がイクとこ見たいんだ。だから、最初これでイってくれるか?」

京一の手には、小型の機械が握られていた。

「それ…」

機械の正体を知って、麻桜の表情が少し強張る。

「あとで、俺をやるから」

そう言って、京一は少し指を動かして、麻桜を攻めたてる。

「あう!」

「駄目か?」

「約束…してくれる…?あとで、必ず京一をくれるって…」

「ああ。麻桜が欲しがるかぎりな」

「だったら…いいよ」

擦れ声で麻桜は、そう答える。

それを聞いた京一は、麻桜に軽くキスして、彼女から離れる。

そして、彼女の秘部から指を抜くと、代りに機械を押し入れる。

「あっ!」

冷たい感触に、麻桜が悲鳴を上げる。

低いモーター音が響いて、麻桜の中で機械が動き始める。

「ふあ、ああ…ん」

薬で熱くなっていた麻桜の身体は、その動きに快感を覚え始めて、声をあげる。

「あ…いい…ああ!」

機械の動きが激しくなり、麻桜の身体が大きく跳ねる。

「やぁ…ん、もう…」

「イきそうか?」

「京一ィ、お願…い…胸にキスして…」

一ヶ所だけ触れられなかった胸へのキスをねだる。

「いいのか?俺が触れても」

「いい…から、お願い…ああっ!」

「判った。その代わり、ここで感じさせてくれるか?」

少し開いた唇を指でなぞりながら、京一はそう聞いた。

「え?」

「ここで、俺を舐めてくれるか?」

「そん…な事…できな…い」

「少しだけだから」

指で、胸の先端を弄びながら麻桜の反応を待つ。

「あ…少しなら…」

熱い感覚に堪えきれず、麻桜は頷いた。

それを聞いて、軽くキスをして口を開かせると、自分をそこに挿し入れた。

「ふっ」

それは既に口内に収まりきれないほど、膨張していて口内の壁を擦る。

舌がそれを絡まるように無意識に蠢く。

息が止まりそうな感覚に、京一の腕にしがみついた。

涙が溢れそうな瞳で、自分を見つめる麻桜の口からそれを出すと、京一は彼女の額にキスして身体の向きを変える。

自分に縋りついて、ねだる麻桜の胸の先端を軽く噛むと、その周囲に舌を這わせて、

強く吸い上げる。

「ああん!もっと…きょういち…もっとぉ!」

快楽を感じて、麻桜は嬌声を上げ続けた。

「イッちゃう…。もう、駄目ぇ!」

麻桜の中の激しさを増す機械の動きに合わせて、彼女は腰を振りつづける。

2ヶ所を同時に攻められて、心臓の鼓動が信じられないくらい早く脈打っていた。

耳元で聞こえるような鼓動に、麻桜の熱が極限まで高まる。

「はぁ…ああ…う…あっ…!くっ…!もう…イ…くっ」

麻桜の頭の中で、白い光が弾ける。

「ああっ!」

京一にしがみついた麻桜は、絶頂を迎える。

荒い息を吐き続けて、自分にしがみついてる麻桜の髪の毛をかきあげながら、京一は

耳元で囁く。

「イッたか?」

その言葉に、麻桜は小さく頷く。

「可愛かったぜ。乱れてる麻桜も」

その言葉に、麻桜の顔が紅く染まった。

「京一だから…京一に見つめられてなきゃ、こんなになったりしない…」

小さく呟く麻桜の頬に、触れるだけのキスをして京一は微笑む。

「約束したからな。今度は、ここに俺をやるよ」

愛液にまみれた機械を引き抜いて、指を這わせながら、京一は囁いた。

「俺の時も今みたいに乱れてくれよ」

麻桜は羞恥に顔を背けようとしたが、顎を掴まれて深くキスされる。

「ふっ…う」

彼女の口内を舌で思う存分味わいながら、指を秘部に挿し入れた。

「い…や」

内部を指でかき回されて、麻桜は首を激しく振った。

「やぁ…ん、京一」

「麻桜、ここ触ってみろよ。凄いぜ」

麻桜の腕を掴んで、その指を秘部に触れさせる。

「?」

麻桜の指にぬるりとしたものが触れる。

「あ…?」

「中も凄いな」

耳元で囁きながら、麻桜の指を奥に挿し入れさせる。

内部は蜜で溢れていて、指を動かすたびに淫靡な音が響く。

「は…ああん」

クチュクチュと言う音を指が立てる度に、麻桜の身体が微かに震える。

「熱いな、麻桜のここは」

京一は、麻桜の手を離すと、彼女の太腿に軽くキスをして、舌を秘部に潜り込ませる。

「き…京一!?」

驚いた麻桜が身体を浮かせて、京一の身体を押し返す。

「な、何を」

「俺をやるって言っただろ?」

麻桜の腕を押さえながら、京一は言葉を紡ぐ。

「馬鹿…っ!」

溢れ出る言葉を押さえようと、麻桜は口を塞ぐが、端から漏れる声は押さえられなかった。

「ふぁ…」

麻桜の弱い所に次々と攻めていき、最後に残された胸の中心に京一は指で掴む。

指の腹で、先端を擦ると、甘い喘ぎ声があがる。

「ああ…あ…ん」

「ここがいいのか?」

硬くなりつつあるそこを擦りながら、京一が意地悪く聞く。

「あ…いい…」

熱さを持て余して、震える麻桜の全身には紅い刻印が散りばめられていた。

唇で先端を吸い上げて、その周囲に舌を這わせる。

「あ…熱い…京一…頂戴…もう…」

「また、イきそうか?」

「う…ん」

頷く麻桜の口内に、指を数本入れると中を犯すように動かす。

充分に濡らしたそれを麻桜の秘部に挿し入れて、内部で弱い所を探る様にあちこち動かす。

中を蠢く感覚に、麻桜は堪えきれないように、シーツを強く掴む。

「お願い…京一、早く入れて…焦らさないで…」

弱々しい声に答えるように、中からゆっくり引き抜くと、京一は自分自身を挿し入れる。

「あっ!」

膨張したそれに内部を擦られ、麻桜は声を上げた。

ゆっくりと中で動き始めたものを、麻桜は締付け始める。

「あ…ああ、い…いい。ふっ…」

「凄く締付けてくるな。麻桜のここは…」

京一も自分を締めつけてくる麻桜の熱さに酔い始めていた。

「あっ…ん」

京一の動きが速くなるにつれ、麻桜の嬌声も長く高まってくる。

「は…」

意識が朦朧としてきた麻桜は、縋るものを探して、京一の背中に腕を絡める。

しがみついてくる麻桜の吐息を感じながら、彼女を強く抱きしめる。

「中でイってもいいか?」

その声で、麻桜は薄く瞳を開くが、その意味をはっきりと理解できなかった。

「な…に?」

「麻桜が良すぎるから、俺、もうイきそうだ」

「うん…あたしも…もう…イッちゃう…」

その言葉を聞いた京一は、麻桜の腰を掴んで、前後に揺さぶった。

「ああっ!あ…!」

激しく何度も腰を打ちつけられて、絶頂を迎えた麻桜は意識を手放した。

「くっ!」

同時に果てた京一は、乱れた息を整えながら、自分の腕の中に崩れ落ちた麻桜の身体を

抱きしめつづけた。

(これで、少しでも眠ってくればいいんだけどよ…)

麻桜の髪を指で梳きながら、京一も眠りに落ちていった。

 

「ん…」

朝、降り注ぐ光に眩しそうにしながら、麻桜は片腕を伸ばして傍らにある筈の温もりを

探す。

「京一?」

傍にある筈の温もりを見つけられず、軋む身体を起こしながら、麻桜は周囲を見回す。

床に落ちていた服を拾って身に纏うと、ゆっくりと歩きながら、家の中を捜す。

少し開いた玄関の扉の向こう、広場に面した所から、話し声が聞こえる。

「?」

僅かに開いた扉の隙間から、その様子を窺う。

「もう少し、眠らせてやろうな。それまでここで日光浴だ」

長老の家から、連れかえってきたらしい子供達を膝に抱えながら、京一はそう言った。

無邪気に笑う子供達をあやしながら、晴れ渡った空を見上げた。

「お前らの母さん、凄い女なんだぜ。俺達の住んでた街を1人で護ったんだから。

おまえら、その事を誇りに思っていいんだからな」

誰に聞かせるでもなく、京一は昔の事を話し出す。

「俺なんかには、勿体無いくらいのいい女なんだからな。あいつは」

京一に気づかれない様に、麻桜は背後に近づいていった。

そして、彼の後ろから首に手を回す。

突然、感じた温もりに京一は後ろを振り向く。

「起きたのか?」

「うん」

京一の背中に凭れかかりながら、短く答えた。

「久し振りに、よく眠れた気がする。ありがとう」

「だったら、いいけどな」

麻桜は、京一の横に移動して腰を下ろした。

「…」

子供を1人受け取ると、抱きかかえた。

「ずっと、忘れてたみたい。あたしは1人じゃないって…」

麻桜はそう言って苦笑した。

「余裕がなくなってたのかもしれない。京一が支えてくれてるのにも、気づけなかった」

麻桜は子供をあやしながら、言葉を紡いでいく。

「頑張らなきゃいけないって思いこんで、空回りしてた。いつだって、1人じゃなかったのにね。あの闘いの刻も、現在も、必ず誰かが傍で支えてくれてたのに」

京一は、そんな麻桜を抱きしめた。

「焦らなくていいんだなって、昨夜、思った。自分1人でできない事は、誰かが必ず

助けてくれる。そう思ったら、気が楽になった」

「…」

「だから、あたしはもう大丈夫。京一にも甘える事にする。もし、あたしがまた空回り

してたら、助けてね」

「もちろんだろう。そんな事」

京一は、抱きしめている腕に力を込める。

「俺達は、支えあってここまで来たんだから。これからだって変わりゃしないさ」

「うん」

麻桜は嬉しそうに笑みを浮かべた。

「ねぇ、京一?さっき言ってた事、追加していい?」

「へ?」

「あんた達の父さんも凄いんだよって、この子達に教えたい。父さんがいてくれなかったら、戦いに勝つ事なんて、できなかったんだよって」

「なんか、照れ臭いな。今度じゃ、駄目か?」

「だったら、さっき言ってた事は、取り消してよ。あたしは、凄い女なんかじゃない。

京一に支えられてるどうしようもない女だよ」

「俺にとっては最高の女だよ。だから、俺にできる限りの事をしてるだけなんだから」

「あたしにとって、それが一番嬉しい事だよ」

麻桜は、京一の手に自分の手を重ねた。

「だから、この手を離したりしない」

麻桜は京一の顔をまっすぐに見つめてそう言った。

「俺も離す気なんかねェよ」

京一も、彼女から眼をそらさずにそう言った。

見詰め合っていた2人の唇が静かに重なる。

それぞれの想いを交し合って新たに歩き出す事を誓った。

2人にとって、それは特別なバースディ(記念日)

 

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