小林 晶 こばやしあきら


【HPコラム 2023・6】

やどかり(寄居虫)シネマによる映画上映会

 5月13日やどかり(寄居虫)シネマによる映画上映会が開催された。参加者は12名。
 上映作品は黒澤明監督の『乱』
 日仏合作の歴史映画。物語はシェイクスピアの悲劇『リア王』と毛利元就「三子教訓状」を元にしており、架空の戦国武将・一文字秀虎の家督譲渡に端を発する三人の息子との確執、兄弟同士の骨肉の争いと破滅を描く。当時の日本映画で最大規模となる26億円の製作費を投じた大作で、構想から9年もかけて完成した。あらすじは、
 戦国時代を無慈悲に生き抜いてきた齢70の猛将、一文字秀虎は、隣国の領主二人を招いた巻狩の場で居眠りをしてしまう。そして、そこで悪夢をみた秀虎は突然隠居することを表明し、長男の太郎、次男の次郎、三男の三郎に三つの城を分け与え、自身は客人として静かに余生を過ごしたいと願う。更に「一本の矢はすぐ折れるが、三本束ねると折れぬ」、三本の矢を以って兄弟の団結の要を説くが、三郎は示された三本の矢を力ずくでへし折り、父親の弱気と兄弟衝突の懸念を訴える。秀虎は激怒し、三郎とそれを庇う重臣の平山丹後をその場で追放する。隣国の領主、藤巻は三郎を気に入り、婿に迎い入れる。家督と一の城を継いだ太郎だが、正室の楓の方に「馬印が無いのでは、形ばかりの家督譲渡に過ぎぬ」と言われ、馬印を父から取り戻そうとする。そこで家来同士の小競り合いが起こり、秀虎は太郎の家来の一人を弓矢で射殺する。太郎は父を呼び出し、今後一切のことは領主である自分に従うようにと迫る。立腹した秀虎は家来を連れて、次郎の二の城に赴くが、太郎から事の次第を知らされていた次郎もまた「家来抜きであれば父上を迎え入れる」と秀虎を袖にする。秀虎は失意とともに、主を失って無人となった三郎の三の城に入るしかなかった。
 そこに太郎・次郎の大軍勢が来襲する。三の城は燃え、秀虎の家来や女たちは皆殺しにされる。更にどさくさに紛れ、太郎は次郎の家臣に射殺される……。


【HPコラム 2022・4・前半】

 自立すすむ『やどかり』
                        小林 晶

 22年3月20日、第三回『シアターやどかり(寄居虫)』の総会が開催された。
 寄居町年金者組合が母体で、代表は荻沢裕志さん、事務局長に大原秋年さん、この人は昔、島根県八日市出身で劇団『鼓舞指座』立ち上げ、先頃亡くなった人気作家西村京太郎作品の『四つの終止符』を映画化した人。その内容は耳の不自由な少年が母親殺しの罪に問われ、孤独な状況での取り調べ、そして裁判。少年は無実を叫びつつ憤死する。少年を死に追いやった責任は誰にあるのか!家庭環境や、取り巻く社会は、彼にとっていかなるものであったろうか?……ヒューマニズムあふれるサスペンスドラマの展開のなかで、次々と暴かれてゆく、コミュニケーション不在の恐るべき現実−−−。



 16年6月に、映画サークルを呼びかけ、会員制1ケ月会費千円。第三日曜日上映、会場は寄居町桜沢公民館。その都度大原さんが持っているDVD作品を、今年2月までに24本鑑賞した。その中で特筆すべき作品、『ひろしま』は1953年日教組制作の映画。広島市民の8万8千人が協力、(ベルリン国際映画祭で入賞)著名なアメリカの映画監督オリバー・ストーン(ケネディ大統領が暗殺されたパレードの映画から、複数の狙撃者がFBIの国家組織の者たちだったことを明らかにしてゆく圧巻のドキュメンタリータッチの傑作で注目された)は、観るべき映画と絶賛している。
 国連で核廃絶を呼びかけ、ノーベル平和賞を受賞したサーロー節子は、「被爆した当時そのままが再現されている。これが現実なんです」と涙をぬぐった。
 こうした映画上映の席で、公民館でなくて自前の映画館をもちたいという大原さんの意見に応えるように、コロナ騒ぎで寄居町桜沢公民館が利用できなくなった問題をきっかけに、今年になって映画館を作ったので提供したいという人が現れた。観客席20人は収容できる広さである。


シネマ「ヤドカリ」上映会

黒澤明作品を1年かけて上映

毎月第3日曜日13時半

埼玉・寄居町「希望の園」内