中村 昇 なかむらのぼる


1933年 神奈川県生まれ

『戦後の始まり』 2016年 私家版
中村昇歌集 『阿吽』  2011年 短歌新聞社
中村昇歌集 『光代の死』  2006年 原田出版企画
中村昇歌集 『残心』  2005年 文治堂





『戦後の始まりー苦難の時代を乗り越えて

中村 昇

私家版


2016年12月発行(2023年4月再製本)

戦後のはじまり
新聞の見出し躍る
内外の動き
人びとのその日
戦時はつづく
東久爾内閣
外地部隊の復員
政党・民主組織の胎動
幣原内閣
本書に登場する人名一覧


【HPコラム 2023・7】

短歌 

車内にて背中に痛み出てくれば外の景色が遠くなりたり

ボックスの二人がスマホいじりいて話をかわすことのなかりき

声殺し携帯電話話しいる隣りの男気をつかうらし

待合せの時間に早く着きすぎて時の過ぎゆき遅き時あり

駅名を読みとれぬまま通りすぐ特急列車勝田へむかう

那珂川の川面静かに陽をはねて稲刈りあとの緑やさしき

孤独死ということば頭をよぎりたりいつかいつの日その日は来るや

半生はすでに過ぎたり老いの道茂吉短歌の評を読みつつ

この友もかの友どち病みており近づく老いに心重かり

八割をついに越えたる不支持率政府はこれで何をしたがる

桜木に短冊あまた吊されて被災地復興願う声のす(上野公園

心臓は日に十万の鼓動すと年寄りなれば疲れのきたり

気ぜわしき要事をもちているならん乗込みすぐに携帯開く

他の人と口きくことのなき一日がまたも過ぎゆく夏の近くに

悲しみとあわれについてしやべりいる大江健三郎カツゼツ悪し

歳晩の呑み会ありて戦争を知らぬ七十歳軍歌をうたう

息止めてガマンするのは何か死体役者の気が気になる

上野公園口のかわりようジジは時代にとりされる  


【HPコラム 2022・6 後半】

短歌 「同期会」

秋半ば一年おきの同期会まだ生きてると挨拶をする

少年が骨壺抱いて歩みおりまだ片付かぬ瓦礫の脇に

ブランコの下のくぼみの懐かしく子供いくたり足に蹴りたる

にぎやかな卓球場の午後にいておみな一球ごとに声だす

地球から零れ落ちるということは七十億人まさかあるまい

百円でリンゴ一つが買えぬまま景気の悪く秋は深まる

柔らかきモモの質感描かれて杉本真理の絵筆はたくみ

歌いつつ体激しく動かすは若さの持てる特権ならむ

知らなけりゃ知らないままに過ぎゆきて人生意外に軽きものあり

めんつゆとめんつゆのもとコンビニの棚の前にて違いに迷う

欠陥の原発商品輸出するその神経を疑いており

武士道は死ぬこと也といいたるは誰にしあるか名言ならず

残される時間の嵩は知らねども死ぬということ忘れて生きる

それとなく別れのことは言いてきぬ先の命の見えぬこの頃

他愛なく堅牢設備崩れ落ち原発事故の罪は重かり

隣席に座るおみなのバックには外国たばこ潜みていたり

待たずともいつかその日はやってきて時間に止まることはなかりき

憲法をかえようとする動きあり被災の陰に隠れしままに

秒針の動くかすかの音のして目覚まし時計深夜休まず



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