沢村ふう子 さわむらふうこ |
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「下北半島から北海道・泊原発への旅」 2017年 web労動者文学会作品集 「「大東亜共栄圏」という神話を考える 火野葦平から」 第34回労働者文学賞2022 評論/ルポの部門 入選 『労働者文学』91号(2022年) 沢村ふう子作品集 『ともに在る/ともに生きる』 2018年 自家版 「ともに在る、ともに生きる」 第24回労働者文学賞 小説の部門 入選 『労働者文学』71号(2012年) 「時給八百円也」 第22回労働者文学賞 小説の部門 佳作 『労働者文学』47号(2010年) |
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【HPコラム 2025・1】 沖縄・・・米軍基地と性犯罪 沢村 ふう子 |
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昨年の12月初旬、1週間程沖縄で辺野古の抗議行動に参加した。その時に高里鈴代さん(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表)の講演を聞く機会があった。「米軍基地と性暴力事件」と題して、米軍が上陸した1945年から80年にも渡って続いている米兵による性暴力の実態と背景が語られた。 (1)1945年〜280件 (2)1955年〜167件 (3)1965年〜155件 (4)1975年〜56件 (5)1985年〜28件 (6)1995年〜19件 (7)2005年〜11件 (8)2015年〜13件+α 米軍上陸から敗戦、占領、ベトナム戦争(1955〜1975)中に起こった性犯罪は際だって多い。「午後3時頃、母親と畑の除草中の24歳の女性、ジープで乗り付けた米兵2人に林の中に連れ込まれ、強姦される」美里村(1947)、「6歳の女児が、嘉手納高射砲隊所属の米兵に拉致、強姦され惨殺される(由美子ちゃん事件)」石川市(1955)、「午後2時頃、市場に向かっていた19歳の女性、米兵3人の乗ったワゴン車に引きずり込まれ、農道で2人に強姦される」コザ市(1968)など暴力的な荒っぽい性犯罪が頻発した。沖縄の本土復帰(1972)から徐々に件数は減ったが、95年に起こった「3米兵による少女レイプ事件」に対する県民の怒りは85000人の県民大会になった。翌年にSACO合意で負担軽減がうたわれたが、実質は基地機能強化と普天間返還の代替として辺野古新基地建設が決定された。その後もレイプ殺傷害や未遂も含め10件から20件近い事件が記録されている。中でも2016年にうるま市で行方不明になっていた20歳の女性が、レイプ後殺害、1ヶ月近く後にその遺体が発見された事件は傷ましい。これらの背後には声をあげることが出来ず泣き寝入りしたケースも多い。本土でも性犯罪はあるが、沖縄では米軍人軍属による性犯罪がほとんどである。 |
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【HPコラム 2023・9】 沢村 ふう子 |
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あまり報道されていないが、ロシアへの経済制裁に参加している国は国連190カ国余の中で40カ国に満たない(2023年4月)という。アジアでは日本・韓国・台湾・シンガポールのみ。何故か。 |
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(アフリカ系アメリカ人クリント・スミス著・原書房) この本を読んで、今現在もアメリカでは「奴隷解放未だならず」と言うべきだということに衝撃を受けた。著者は奴隷制の物語がいまもなお生き続ける場所・・・八カ所を訪ね歩いた。「奴隷解放宣言」から一世紀半以上たっていても、なおこの国では黒人が差別・・・貧困や暴力・・・にさらされている。普通、歴史は時間軸に沿って叙述されていくが、著者はアメリカの広大な地域を巡って、歴史を横空間に広げて展開する。奴隷制度がなくなった今なお、奴隷の子孫たちが苦しめられている現実とその構造を、実にたくさんの事例をもとに、読者の目の前に見えるように叙述した。訪問先のガイドの説明やツアー参加者の表情、その場所の描写などが具体的に述べられているので、あたかもそこに自分が参加しているかのような臨場感のある記録になっている。私たちは「ブラック・ライブズ・マター」が起こらざるを得ないアメリカの現状をあらためて知らされるのだ。 のっけから驚かされるのはアメリカ独立宣言を起草したとされるトーマス・ジェファソンが多くの奴隷を所有し続け、その利益によって読書や執筆活動、来客をもてなす生活を維持していたということである。時に子供や孫に「奴隷」をプレゼントしていた(ジェファソンは「農園記録」という奴隷についての名前や売却の詳細な記録を残している)。「独立宣言」の有名な一節「すべての人は平等につくられていること。彼らはその創造主によって、一定の譲るべからざる権利を与えられていること」はこの起草者の実際の生活によって裏切られていた。 ジェファソンのプランテーション巡りから始まった奴隷制に関わる物語は、終わりの方でニューヨークという「自由」の象徴である場所がおぞましい奴隷市場の跡地であることを明らかにする。南部だけが奴隷制の甘い汁をすったのではない。アメリカの経済・資本そのものが奴隷労働によって発展したのだ、奴隷解放の前も後も。 アメリカで現在まで続く黒人支配の有り様が歴史の隠蔽や書き換えを伴って続いている。それを読んで、植民地支配や侵略戦争についての歴史を隠蔽、改ざんする日本の姿が重なるように感じられた。 この本から、アメリカの各地に奴隷制やそれに連なる「遺跡」及び「その後」、「刑務所」「歴史記念館」などを巡る観光ツアーが行われていることを知った。アウシュビッツのツアーがいわゆる「ダークツーリズム」と呼ばれるが、そういう内容のものもあれば、ガイドのやり方によっては単なる観光名所巡りにもなっているらしい。白人も黒人も若者も中高年も外国人も参加出来る。日本では、修学旅行はあるけれど、一般の人にツアーが組まれるとは余り聞かない。このようなツアーを通して歴史に向き合う機会が日本でもあってほしい。 それにしても教員であった時に「奴隷制」について机上の知識を語っていた自分は、アメリカ奴隷制の今に至る根深い闇をどれほど知っていたのかと思うと冷や汗が出る。是非一読をお勧めしたい。 |
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