短歌

 同期会     中村 昇
秋半ば一年おきの同期会まだ生きてると挨拶をする

少年が骨壺抱いて歩みおりまだ片付かぬ瓦礫の脇に

ブランコの下のくぼみの懐かしく子供いくたり足に蹴りたる

にぎやかな卓球場の午後にいておみな一球ごとに声だす

地球から零れ落ちるということは七十億人まさかあるまい

百円でリンゴ一つが買えぬまま景気の悪く秋は深まる

柔らかきモモの質感描かれて杉本真理の絵筆はたくみ

歌いつつ体激しく動かすは若さの持てる特権ならむ

知らなけりゃ知らないままに過ぎゆきて人生意外に軽きものあり

めんつゆとめんつゆのもとコンビニの棚の前にて違いに迷う

欠陥の原発商品輸出するその神経を疑いており

武士道は死ぬこと也といいたるは誰にしあるか名言ならず

残される時間の嵩は知らねども死ぬということ忘れて生きる

それとなく別れのことは言いてきぬ先の命の見えぬこの頃

他愛なく堅牢設備崩れ落ち原発事故の罪は重かり

隣席に座るおみなのバックには外国たばこ潜みていたり

待たずともいつかその日はやってきて時間に止まることはなかりき

憲法をかえようとする動きあり被災の陰に隠れしままに

秒針の動くかすかの音のして目覚まし時計深夜休まず



DIGITAL『労働者文学』試作号 目次

労働者文学会HOME