黄(ファン) 英(ヨン) 治(チ) |
|||
1957年岐阜生まれ 「あばた」で第41回部落解放文学賞受賞 2015年 「壁を打つ旅」で第20回労働者文学賞(佳作) 2008年 「記憶の火葬」で第16回労働者文学賞 (入選) 2004年 季刊『千年紀文学』 連作「虹のしみ」連載中 |
|||
![]() |
|||
短編小説集『こわい、こわい』 (三一書房 2019年4月5日) 韓国語版 『あの壁まで』 (鄭美英訳 2019年) 韓国語版 『前夜』 (韓程善訳 宝庫社 2017年) 『在日二世の記憶』 (共著 集英社新書 2016年) 『前夜』 (コールサックス社 2015年) 『あの壁まで』 (影書房 2013年) 『記憶の火葬ー在日を生きるーいまは、かつての〈戦前の地で〉』 (影書房 2007年) |
|||
|
|||
【HPコラム 2023・1】 前期高齢者の断捨離 |
|||
|
|||
|
|||
【HPコラム 2021・6】 三日で二度のPCR検査 黄英治 |
|||
腹部に違和を覚えたのは五月十七日の夕食後だった。右上腹部、押さえると肋骨にあたる。変だなぁ、とは思ったが、軽く考えていた。入眠後の夜半過ぎに激しい痛みが襲う。差し込みは背中の同位置にも。やがて全身の関節が強張り、寝返りを打つのも、息をするにも冷汗が滲み、胃が張る。だが吐き気はない。夕食の帆立刺身で食あたりか、と推定した。 十八日中は起きられず、呻吟しつつ胃 薬と整腸剤を服用した。口にしたのはごく少量の飯と汁だけ。痛みがやや緩和するが39度の発熱。根が神経質。ネット検索する。私と同症状の「急性胆のう炎は、放置すると重症化し、死に至ることもある」を見つけて震えあがった。自然治癒はない。十九日、意を決して、かかりつけの総合病院へ。熱がある。コロナチェックにかかるか? 正門の体温計測36度1分⁈ 問診票を詳細に書く。看護師が体温計を差し出す。万事休す! 38度9分。 こちらへ、と隔離。ここでお待ちを。内科医が来ます。ビニールで仕切られたスペースの壁に「対症療法しかできません」とある。半時間ほどで小太りの内科医が来て、PCR検査してもらい、薬を出します。それ以上のことはできません、と私の背中をさすり、十秒で消えた。看護師が鼻の奥へと検体採取のスワブを回転させながら挿入した。うぐぐぅ、と唸る。思った以上に苦しい。結果は先生から携帯に電話します。処方された薬は総合感冒薬と頓服。この処方で症状が改善するか、と薬剤師に医師への確認を依頼して帰宅。半時間後、頓服処方されているから、と薬剤師。二時間後、内科医から、陰性でした。服薬して様子を見てくれ、と。 翌日、頓服の効果か平熱になり痛みは治まったが、不安のなか悶々と過ごした。二十一日に再び外来へ。平熱、PCR陰性は錦の御旗。やっと消化器内科の医師の診察が受けられた。血液検査、CT撮影。そして医師の診断。ご心配の胆のう炎でなく、大腸憩室炎です。即入院して、絶食・点滴、抗生剤治療します。虚を突かれた。即入院、ですか? ええ、炎症数値が高いですし、早い方がいいです。PCR検査後、本院へ行ってください。あの、二日前にPCR検査陰性判定出ていますが……。決まりですから――。症状と苦痛に見合った治療を、発症後五日目にようやく受けられた。五泊六日の入院生活を経て二十六日、「無事」に退院した。 |
|||
|