平敷武蕉
 へしき ぶしょう


1945年 うるま市生まれ
1968年 琉球大学国文科卒業 国語教員として教職に就く
2005年 第3回銀河系俳句大賞
2013年 第41回俳句人連盟賞
2017年 第31回労働者文学賞
2019年 沖縄タイムス芸術賞奨励賞
2020年 沖縄タイムス出版文化賞

      文芸誌『南溟』編集責任者





平敷武蕉 俳句・紀行文
『風の黙秘』
2022年3月1日
南溟舎
1500円

想定外そんなはずのない海鳴り

主題はない咲いているだけのハイビスカス

風の黙秘不在の顔が月になる

雲生えて日輪の島立ち上がる

生き方に二通りありデモ観る目

列島はタイタニック傾くしかない君

何回も凌辱されて基地が好き

海明ける凱歌のような蝉しぐれ

ペガサスの眼となれ島の初茜

ハグロトンボ玉虫色の世を畳む

逝くなんて炎暑がファシズムのまま

スヌイ掬う掌から九条抜けていく


表紙絵は、「南溟」会員の吉浜スミエさんが引き受けてくれた。この本のためにわざわざ描いてくださった心遣いに感謝するばかりである。絵は、傷だらけの地球が痛みのまま赤い血を流している様子を喚起させる。まさに現今の地球の姿だ。希望は見えず、世界は病んでいる。新型コロナの逆襲が人類に追い打ちかける。それでも風は起こらず、沈黙し、黙秘したままだ。だが黙秘とは、いつか目撃した事象を証言し、真実を明らかにするための反撃の姿勢でもある。(「あとがき」より)